必殺博愛固め

日本語の練習

必殺博愛固め


わたしが保育園児だった頃、少年アシベを録画してもらって、繰り返し繰り返し見ていたらしい。
なすびあたまの元気なアシベとか、愛くるしいごまちゃんは今でもずーっとよく覚えてる。



先日、夕方テレビをつけると、たまたま懐かしい顔が画面に現れた。
アシベとごまちゃん…!!



調べてみると、20年ぶりにNHKでアニメが放送されているそう。
断片的な映像の記憶が、懐かしさとともにどんどん溢れてきた。



大人になって見てみると、見え方も全然ちがうものだなあ…







ん………?スガオくん?誰?






無口なスガオくんは小さかったわたしの記憶に残ってないキャラクターだった。





でも、なにこの不思議な感じ!?
一気に惹きつけられてしまった。



スガオくんは、ストーリーの中で一切言葉を発しない。
基本的にポーカーフェイスで、遠くにいる親友のアシベを思って泣いてばかり。
アシベ人形を常に連れて歩く。
喜び(顔には出さないが)のあまり、数日間不眠になるなど。
一方で、芸術の才能にあふれ、絵や工作が得意。







これだけ見れば、自閉症だの緘黙症だの言われるのもわからんでもないけれど、それは一旦置いとく。







少年アシベの中で、スガオくんって、ほんとに愛されてる。




両親はもちろんのこと、アシベはじめとしてイエティとかチットちゃんもみんなスガオくんのことが大好きだ。


スガオくんはスガオくんで、それを自覚してるのかどうかわからないけど、手紙を書いたりプレゼントをしたり、とても誠実で素直な行動をするのだ。
 



そんなスガオくんの必殺技は
博愛固め。



作中では、アシベが、喧嘩を売ってきたサカタの兄にくりだすのだが、しっかと相手をハグするだけという、技かどうかもわからないもの。
アシベにぎゅっとハグされたサカタの兄はひるんで逃げてしまう。


この技をスガオくんが考えたというのが、またなんとも言い難い愛おしさ…





スガオくんの無口の裏側にあるセンシティブさは、人一倍に、愛の力というかなんというか、柔は剛を制す、ではないけれど、そういうのを心得ているように感じたのでした。











今になって少年アシベの漫画を読んで分かった、登場人物何かしらブッとんだキャラクターしかいない。


アシベの世界って、普通の人間が持ってる黒い部分を凝縮したような漫画だけど、なんだかんだ言って、そういうとこにとてもおおらかなように思う。



排除するでもなく、特別気を遣うでもなく。
少年漫画みたいな綺麗事ばっかり言うものじゃなくて、ただただ受け入れられている。
やらかい絵柄とブラックユーモアがうまく中和されているのもあると思うが、読んでて心地よい。




敵も味方もいない。みんながそれぞれ愛おしい。
スガオくんの博愛固めがそう教えてくれたように感じたのだった。